In situ蛍光分光XAFS(X線吸収微細構造)によるV-TiO2触媒サイト構造変化の観察

Structural Changes of Catalysis Site of V-TiO2 Observed by In situ XAFS Combined with Fluorescence Spectrometry

泉 康雄, Dilshad Masih, 八木信弘, Aurel-Mihai Vlaicu, 奥井眞人, 二澤宏司, 福島 整

化学工業, 693 - 697, 54(9) (2003).

Written in Japanese.

触媒作用が起きるためには、しばしば触媒中元素の特別な組み合わせを必要とする。排ガス用選択脱硝およびo-キシレン等炭化水素を選択酸化するにはバナジウム(V)とチタン(Ti)の酸化物の組合せが必要である。選択的な触媒作用がTiO2表面一層以下相当量のVを加えた場合に起こることが報告されており、こうした場合の少量のVサイト構造を決定することが重要である。さらに上記の触媒反応はいずれも触媒と基質間で酸化還元を伴う過程であるため、触媒反応条件にてスペクトル観察を行ない、Vのとる価数に応じたそれぞれのサイト構造を決定できればなおよい。 このような重要性をもつにも関わらず、V-TiO2触媒でのVサイト構造を直接調べた研究は少ない。X線吸収微細構造(XAFS)は非晶質やハイブリッド材料の局所構造にもアプローチできる点で広く用いられているが、XAFS法を表面一層以下相当量の非晶質Vサイトについて適用すると、観測したいVの信号に周期表で直前に位置する高濃度チタンによる強い吸収(透過法)あるいは強い信号の妨害(蛍光法)を受ける。 VとTiの酸化物が特別な組み合わせになっている理由として、少量であるため単原子状にまで表面に分散したVとTiの酸化物との接合部の構造が深く関与しているらしい。触媒作用に伴う構造変換、特に上記の酸化還元に伴う構造変換に対応させて触媒中のVからの蛍光X線信号のみを結晶分光により高signal/background比で取出してスペクトル測定し、この接合部の構造について解析できれば信頼度の高い情報となり、Vサイト構造と触媒機能とを関係づけられるものと期待される。ナノテクノロジーへの寄与として、(1)ナノサイズの触媒活性点構造の解明により、上記触媒系およびチタン酸化物に関わる光触媒系の構造的理解につながることと、(2)サイトの価数に応じてXAFSスペクトル測定する手法の開発の2点を挙げておく。


Chiba University > Graduate School of Science > Department of Chemistry > Dr. Yasuo Izumi Group