Breathing Metal Cluster Catalyst

Y. Izumi and Y. Iwasawa,
Gendai-kagaku (Modern Science), 16 - 23, 295(October) (1995).

 

Written in Japanese.

 

金属触媒は固体触媒一般の中でしばしば優れた触媒特性を示す.通常金属触媒はSiO2,Al2O3,TiO2,MgO,活性炭,ゼオライト等の担体に担持させて用いるが,これにより金属活性点(触媒作用の反応サイト)を分散させることができる.こうした金属触媒の調製法として,有機金属クラスターを用いる方法について考えてみよう.有機金属クラスターとは,メチル基(Me),シクロペンタジエニル基(C5H5),アリル基(C3H5),カルボニル基(CO)等の有機配位子で安定化された金属原子集団のことで,これを担体に固定化することにより,その化学的特徴(構造的および電子状態的)を生かした,優れた触媒を設計することが可能になると考えられる.  この金属クラスターを担持した触媒(担持金属クラスター触媒)の化学的特徴を調べる際には,クラスターを構成する金属原子間の結合に関する情報と,クラスターと担体表面原子との界面結合に関する情報が重要である.これらの構造情報はEXAFS(広域X線吸収微細構造)により得ることができる.X線吸収スペクトル(XAS)を測定すると各元素に固有の吸収エネルギーでの特性吸収端が見られ,さらに各元素(吸収原子)の内核原子の種類(K, L, Mなど)によりそれぞれの吸収端が存在する(例えばルテニウムK吸収端は22.1keV付近).この特性X線吸収端付近から高エネルギー側を詳しく見てみると,1keV以上の広領域にわたって弱い振動構造が観察できる.これがEXAFSである.振動構造が現れる理由として,X線によりたたき出され発散した内核電子が,吸収原子の周りの原子により散乱されたときの干渉によるものと説明されている.対象元素の特性X線吸収エネルギー付近の領域を試料透過前後のX線強度(あるいは試料透過前X線強度とX線照射により試料から出た蛍光強度)を測定するEXAFSは試料の状態や雰囲気などに依存せず,その場観察が可能である.  EXAFSによる,担持金属クラスターと担体表面酸素原子との結合の観測例を示す.遷移金属の中で,特にRh,Ruは触媒活性が高く,また配位子や溶媒(均一系触媒の場合)または助触媒(固体触媒の場合)を制御することにより,例えばC1ガスから付加価値の高いアルコールの選択合成が可能になる等の利点がある.


Chiba University > Graduate School of Science > Department of Chemistry > Dr. Yasuo Izumi Group