表面化学研究室(千葉大学理学研究科)のキース・ジャレット・ライブ評

キース・ジャレット来日公演

    1999.9.27 上野・1階13列(ソロ)9000円*2

    大学の先生かのような黒いグレーのシャツと黒いスラックスのいでたちで現れる。これが本物のジャレット氏なのだ、と不思議な気分

    【前半】
    1. 途中から現代音楽風に移行
    2. ロマンチックな小品。とても気に入る
    3. ラテン風の曲
    4. (記録なし)

    【後半】
    1. (記録なし)
    2. 続けて静的な曲
    3. (記録なし)
    4. 静的な曲、「悲愴」交響曲のフレーズを想起させた
    5. ジャズ風の曲


    【アンコール】
    1. 音の広がりが感じられるロマンチックな曲(My Ship)
    2. リズミックなジャズ風(Old Man River)
    3. Danny Boy(私には「この道」に聴こえた)

     

    1999.9.29 上野・1階13列(ソロ)9000円*2

    【前半】
    1. ウィーン・コンサート風の曲
    2. 速いテンポの曲
    3. マイルス風(渋いリリシズムを感じたということか?)の曲
    4. 現代音楽風
    5. 明るいグルーブを含んだ曲、ジャズらしい


    【後半】
    1. 刑事ドラマのような、スリルのあるリズムの曲
    2. マイルス風
    3. 静かな曲
    4. Blame It on My Youth風の曲
    5. Round Midnight


    【アンコール】
    1. リズムが印象的な曲(途中重低音を弾く)All the things you are
    2. 静かな曲、まずまず I love you Porgy
    3. リズムが印象的な曲(即興)

     

    2001.4.23 渋谷・1階11列(トリオ)9000円*1

    CDアルバムAlway Let Me Go Disk1(2002年10月発売)に収録

    キースとゲイリー・ピーコックが揃ってライトグリーンのTシャツ、黒いスラックスで現れる

    【前半】
    1. フリー、次第に激しくなってゆく。しばらくして、やっと主題が出てくる。
    ベースのソロからピアノソロ、;両者かけ合う。ゆっくりした主題
    ノスタルジック郷愁溢れるメロディの演奏に移行してゆく
    2. ベースとドラムのパートの後、フランス風(前作アルバムWhisper Not風)の演奏へ移ってゆく
    3. 叙情的なメロディに入る、やや「パリ・コンサート」風
    4. やや「生と死と幻想」を思わせる演奏テーマ。マイルス追悼のアルバムBye Bye Blackbird中のFor Milesのように、ベースとドラムが織り成してリズムが発展していく。ドラムのソロの後、アルペジオでキースが入ってくる


    【後半】
    1. ゆっくりしたパリ風ソロ。おそらくスタンダード曲。アルバムWhisper Notに入っていたかもしれない
    2. またBud Powell風のリラックスした演奏(But Not for Me)
    3. 寂寥感だけでなく品格のある演奏。ベースのソロが際立ってかっこいい。Round Midnightとずっと思っていたが、Yesterdaysのようだ
    4. 激しいイントロ、そして速弾きになってゆく(オリジナル曲)


    【アンコール】
    1. フランス映画のテーマを思わせるような、ゆっくりしたピアノソロ(Iユm Gonna Laugh You Right out of My Life)
    2. Bud Powell風(One for Majid)

     

    2002.10.30 上野・1階3列(ソロ)12000円*2

    キース・ジャレット、日本での150回記念コンサート。特製パンフレットを鯉沼ミュージックよりいただく

    CDアルバムRadiance Disk2(2005年4月発売)収録

    3--31, 32シート:やや右側なので、手は見えない。立ち上がったときの、自由奔放な表情は見えるだろう
    黒いシャツ、1999年のソロコンサートのときのものと同じ?

    【前半】
    1. 第1楽章
    (Radiance Part 14)
    難しいコードから始まる。乾いた感じのする高音とその背景を織り成す左手の低音
    ゆっくりしたテンポになるが、すぐ速くなっていく
    自在なテンポ、そして遅く弱音になる
    ゆっくりした分散音がコードを形成する
    しばらくして、アルバム「Staircase」中のような速いパートになる
    低音のリズムを連続して形成してゆく

    (Radiance Part 15)

    高音のゆっくりした残響音が印象的なフレーズに移る(19:21頃)。依然、現代音楽風の和音が続いている
    ゴスペル風に移行。優しく、なぐさめるようなメロディが入ってくる。アルバム「Sun bear concert - 札幌」の主題を想起させる
    (Radiance収録は前半ステージではここまで。残りは2005年秋のDVDで)

    2. 19:32、第2楽章
    現代風の速いコードで始まる(拍手の邪魔で再スタート)
    波のようなリズムが始まり、速く、激しくなってゆく
    ダイナミックで複雑なリズムが聞こえる
    相当前衛的なパートに入る。リズム、コードともどのようなものなのか判然としないほど
    そして、連続的な山なりのフレーズを形成してゆく、そしてより速くなってゆく
    中程度の速さで、乾いた印象のするコードが聞こえる
    低速になる
    激しく、追い求めるようなコードになり、キースが立ち上がる。激しいが、やはり乾いた感じのする音である
    19:46頃、次第にメロディが少しずつ入ってくる
    メランコリックなメロディになる。前衛的なパートから叙情的なパートへの移行は第一楽章よりもやや急な感じ
    明るい印象のバラード、強いて言うと、アルバム「ブレゲンツコンサート」の主題に似ている
    19:50頃、休憩に入る


    【後半】
    3. 第3楽章
    20:16、再開
    静的で乾いた、ゆっくりしたメロディから始まる
    舟唄(バルカローレ)のようなテンポで進む。調和的なコードである
    こうしてみると、全体構成はケルン・コンサートに似ている
    左手の優しいコードに、右手でフォーク的、素朴なメロディが重なる
    4. 第4楽章
    20:25、リズムの章の予感
    うねるような、速いリズムで始まる
    ダイナミックな低音のリズムが発展してゆく。心地よいモダンな響きのリズム、フレーズになる
    一旦切れ、フーガ調になる
    やはりリズムが広がってゆく。面白い!ブレゲンツ・コンサート後半のようだ
    特に低音からのリズム展開が楽しい
    やや速いテンポはそのままで、リズムのバリエーション。左手と右手が複雑に絡む
    20:36、一旦切れる
    右手で分散したゆっくりした音が続く(未完)
    中断(拍手のせい?)

    (Radiance Part 16)
    20:39、ノスタルジックな曲を弾き直し始める。故郷を遠くで想うような楽想である
    20:45、最高に優しい、包みこんでくれる様なバラード、それは幼い頃の友達と会うようでもあり、卒業式の皆の表情を想い出させるようでもある

    (Radiance Part 17)

    20:47、終演かと思ったら、再開。アルペジオから入る
    連なるさざなみのような、和的な響きのコード進行
    右手でリズムが展開してゆく
    両手で音の絨毯を形成しているよう
    ややスカラ座コンサートのようなメロディが入ってくる
    左手で8拍子のリズムが次第に強くなってゆく
    1999年の同じ会場でのソロコンサートでもあった、ビートの効いた曲調だ
    21:00、ややリズムが落ち着いてくる。終演
    (Radiance収録は後半ステージではここまで。アンコールは2005年秋のDVDで)


    【アンコール】
    1. Danny Boy
    くっきりした、きれいな音
    エバンス盤より左手のコード変化を増やしたフレーズが後半に入ってくる
    2. 21:10
    アメリカの曲のようだ。バラード。ジャズらしいリズムを足で刻んでいる
    随分自在に展開していくので、スタンダードではなく自作曲かも。キースの初期〜中期のCDの雰囲気の演奏である
    3. 21:20
    Melody at Night, with Youの曲調に近いバラード、ただし同一曲ではない
    アメリカのレストランのBGMで聞こえてきそうなメロディだ

     

    2002.10.31 池袋・2階M列(ソロ)12000円*1

    17:48、JRメトロポリタン口に到着。建物に入り、やたらと長いエレベーターを登る
    こちらは際になってチケットを買ったため、2階席右奥の席。少し3階席がかぶさっている。音がクリアに聞こえてくればよいのだが
    今日は上は青シャツで登場。下はいつもの(ような)黒/グレーのズボン

    【前半】
    1曲め
    澄んだ叙情的なメロディ
    少し甘さに流れている気もする。昨日のアブストラクトな表現と比較してしまうからか?
    遅くなる。一音一音が澄んでいる
    弔いのような、静かなパートへ
    弔いの強い感情が、想い出に移行していくように、解決を見出してゆく
    2曲め
    優しいコードから始まる
    昨日の最後から2曲めにどことなく似ている。青春を想起させる
    バラード部になる。Blame it on my youthに似ているが、展開が不調
    ジャズらしいリズムに位移行
    リズムを繰り返す
    少し疲れているようだ
    3曲め
    現代風の調和的ではないコードがパラパラと入ってくる
    速くならず、リズムが激しくはならない
    鍵盤を広く伝うように展開
    リズムが不規則な内に速くなってゆく
    休止を伴う、速いリズム。面白い!やがて、分散音に
    速くなり、最後は休止を伴うモダンなフレーズにまで展開してしめる
    19:48、休憩


    【後半】
    1曲め
    スタンダード曲だろう
    トリオでのCDのピアノより、複雑な和音で修飾を施している感じ
    2曲め
    紙を出してきた
    粒の揃った丁寧なメロディが印象的な曲。自作曲か?
    美しいメロディが心地よい。記念アルバムに綴った写真を振り返るような曲想だ
    3曲め
    切なく、優しいメロディ
    スタンダードらしい
    全体によくまとまった演奏だと思う、曲の盛りあがりが印象的
    4曲め
    ゆっくりしたメロディで、音のエッセンスを抽出して弾いているようなバラード
    澄んでいるが優しい高音のタッチ
    5曲め
    短調の分散音から入る。Round Midnigtだろうか
    静寂と夜の寂寥感をよく表現している
    ゆっくりした左手のリズム
    乞食の老人が何かを訴えかけているような右手のメロディ
    〜自在なアドリブ、展開〜
    メロディに戻る
    6曲め
    As Times Go By
    速い和音がメロディを包む。複雑で格調高い演奏だ
    速いアドリブが楽しい
    かと思うと、有名な主題メロディが挿入される
    7曲め
    アメリカのレストランでBGMで流れてきそうなバラード
    真っ直ぐに歌い上げてゆく


    【アンコール】
    1曲め
    今日の展開からは意外にも、昨夜のような激しい現代風のコードを弾き始める
    ずっと現代風の展開にはならず、swingし始める
    リズムが繰り返され、メロディがバリエーションを構成してゆく
    2曲め
    今夜本編中の続編のような、静かなバラード。アブストラクトな表現とバラードのコントラストが魅力である
    3曲め
    バラード
    静かなスタンダード曲、メロディを歌ってゆく
    21:20頃、終演

     


Swing Journalより抜粋: